コミュニケーション(QG通信2022年夏号vol.20掲載)

好きに書いてスミマセン--20

ゴールデンウィークの最終日、家でゴロゴロしている私を見かねてか、妻がランチに行こうと誘ってきた。2人っきりでランチなんて2年ぶりだ。 私はジャケットなんか着ちゃったりして、張り切って出発した。

おしゃれなカフェに入り、向かい合わせに座った。妻はアボカドのサラダとハーフサイズのパンケーキとコーヒー、私はシーフードサラダとスバ ゲッティナポリタンとカシスヨーグルトスムージーと食後に普通サイズのストロベリーパンケーキとコーヒーをオーダーした。食後にゆったりした会話を楽しむつもりだった。

私『新しい部署はどう?』妻『…うん、まあ…』、私『実家のお父さんお母さんは変わり無い?』妻『無いんじゃ ない? 多分…』あれ? 会話が続かない。目も合わない。重苦しい空気が流れる。結婚して20年、いつの間にこんな風になってしまったのか。さっきから妻の視線は私の右肩越しに止まったままだ。私は右後ろを振り向いて 『何見てるの?」と聞いた。『クッキー」。また沈黙が続く。

「あぁ~、早くごはん来てくれないかなぁ~」と思っていたら、やっと来たのがカシスヨーグルトスムージー。 ドロドロのカシスの上にヨーグルトがドサッとのっている。私『飲む?」 妻『いい』。これは必要最小限の会話でランチするゲームなのか。初めて飲むこの飲み物に、ヨーグルトとカシスを混ぜて飲むのか、そのまま飲むのか悩みながらも、ストローをブスッと刺して吸った。吸えない。思いっ切り吸った。『ジュル、ジュルジュル!ヨーグルトが詰まって、その先にカシススムージーが来る。やっぱり混ぜてから飲むべきだった。

社長

イラスト:編集部 塩田

妻がふと店内の書棚に目をやった。視線の先には、日本語に訳せないタイトルの女性誌がズラッと並んでいた。「そっか。雑誌でも持ってきて2人で読もう」席を立ち、普段は手に取らない女性向け雑誌を取ろうとしたら、その下の本に目が行ってしまった。タイトルは「こども六法」。なぜか私はその本を席に持ってきてしまった。民法、刑法、日本国憲法など、難しそうな内容を子供向けに簡単に書いている本だった。民法のページを開いた。 (第752) 同居、協力及び扶助の義務夫婦は一緒に暮らし、お互いに協力し、助け合わなければいけません。妻はスマホをいじり始めた。私はテーブルの上に広げていた本をそっと自分の方に傾けた。 (第763条) 協議上の離婚 夫婦は、話し合いで、離婚をすることができます。妻はスマホに夢中になっている。なぜかスマホが味方に思えた。

『お待たせしました』やっとお互いのサラダとナポリタンとハーフサイズのパンケーキが来た。ハーフサイズのパンケーキは思ったよりも大きかった。妻はバンケーキの半分を取っ て、残りを私にくれた。食後のストロベリーパンケーキはキャンセルした。先日受講したコミュニケーション研修によると、コミュニケーションで 大切なのは、「深さじゃなく頻度」だそ うです。数年に一度旅行に行くよりも、 『おはよう』、『おやすみ』などの毎日の声掛けが重要との事。反省したゴール デンウィークでした。

お客様と「植木屋革命」クイック・ガーデニングをつなぐコミュニケーション誌 クイック・ガーデニング通信 2022年夏号vol.20 ,株式会社クイック・ガーデニング,2022年5月30日発行,6ページ