“いのち”の使い方。を子どもたちに説く授業(QG通信2017年秋号vol.1掲載)

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先日、日野原重明先生がお亡くなりになりました。105歳でした。「成人病」と呼ばれていた病気を「生活習慣病」という呼び方に変えたり、人間ドックを日本で最初に始めたり、予防医療に先進的に取り組まれ、生涯現役の医師でした。

私は訃報に接し、本順から一冊の絵本を取り出しました。先生が95歳のときに書かれた「いのちのおはなし』(講談社)という絵本です。

これは、ある小学校で先生が実際に行った授業を絵本にしたものです。教室に入ってきた先生は、黒板の左端に0と書き、そこから右に向かって白線をずーっと引き続けます。右端に磨くとそこに100と書きます。そして、0少し右に「君たちはここ」と言って、10と書きます。次に先生は、持参した聴診器を配って、子どもたちにペアを組ませてお互いに心臓の音を聴かせます。

教室中が静まりかえったとき、”トントン、トントン”と、第1音と第2音が一対になって聞こえてきます。先生は、「大人は1分間に60~80回、生まれたときは1分間に130回、10歳だと90回くらいで、年をとると打つ音がにぶくなり、ゆっくりで低い音になる」と伝えます。次に、子どもたちは先生の心臓に聴診器を当てて、音を聴き始めます。「ほんとだ、ゆっくりで音もちがう!」という声が上がります。先生は95年間でおよそ30億回もずっと止まることなく動き続けた心臓の話をします。そして、子どもたちに「いのちはどこにあると思いますか」と聞きます。子どもたちが「心臓」と答えたところで、「いのちは、きみたちの持っている時間です」というのです。

「時間を使うことはいのちを使うこと」と聞いて、子どもたちはびっくり。皆、いのちが大切だということはわかっていましたが、いのちをどう使うかは考えたことがなかったからです。先生は「また100歳になったら会いましょう」といって、教室を後にしました。先生は、この「時間」を「人のために使う」ことを呼びかけ、自らも実践された方でした。

お客様と「植木屋革命」クイック・ガーデニングをつなぐコミュニケーション誌 クイック・ガーデニング通信 2017年秋号vol.01 ,株式会社クイック・ガーデニング,2017年9月1日発行,4ページ