親の気持ち、子の気持ちに気付く「内観」(QG通信2018年春号vol.03掲載)

03掲載

前回につづき、当社の研修に取り入れている「内観」についてご紹介します。

内観を進めていくと、過去の嫌な思い出や怒りを感じたことが、狭い感情や価値観にとらわれていたことに気付くことがあります。例えば、子どものころ、わが家にはクルマがありませんでした。部活の試合があると父兄が順番でクルマを出して送迎をしていたんですが、順番が回って来るたびに「すいません。クルマがなくて」と言うのが恥ずかしくて嫌でした。最近までクルマがなかったのは、貧乏だったからだとずっと思っていました。

でも、父に対する内観をしていたとき、物置から原付免許の問題集が出てきたのをふと思い出しました。さらに内観を進めていくと、父は中学しか出てなかったのですが、小学生向けの国語辞典(『ドラえもん国語辞典』のような)を買ったことがあり、勤め先の工場の改善提案書を小学生の私に書いてほしいと頼んだことがあったことを思い出しました。そこで、「そうか、うちは貧乏でクルマがなかったんじゃなくて、父に読解力がなくて、免許が取れなかったんだ」と気が付きました。

ほかにも内観をしたことで気付けたことがあります。私には、息子が二人いるのですが、下の子は身体が柔らかく、小さいころは祖父母の前でよく両足を広げビタッと胸を床に着けて場を盛り上げていました。この子に対する内観をしているとき、ふと足の爪を切ってあげたことがないことに気付きました。妻に聞いても、切ったことがないと言います。息子に「足の爪どうしてるの?」と聞いたら、「こうやってるよ」と言って足を口に運びました。何と口で足の爪を噛み切っていたんです。通わせていた保育園では、園児同士がケンカしても爪で相手にケガをさせないように、手の爪を厳しくチェックしていました。幼心に爪を伸ばすことがいけないことだと感じていたのでしょう。親が忙しさにかまけて爪まで気が回らず、口で切っていて身体が柔らかくなっていたのを見せものにしていたのです。ひどい親でした。

これはアルコール中毒の母親に殴られて育った女性から聞いた話です。その女性は、とくに外の女性から父親宛に電話がかかってきたときにひどく殴られたそうです。話を聞いた女性は母親を恨んでいました。「虐待されていた」と。でも内観をして思い出したことがあったそうです。その母親は、どんなに酔って暴力をふるったときも、翌朝には学校に持っていく弁当を必ず用意していたと言います。この女性は「母は自分が憎くて殴ったのではなく、父に愛人がいることへの怒りや悔しさから酒に濡れ、子どもにぶつけてしまっていた」ことに気付きました。大人になって、内観をすることで、二日酔いの苦しさや、男女の話を理解できるようになりますが、子どものころはわからなかったことに気付けます。いっぽうで子の気持ちをくみとることもできるのです。

お客様と「植木屋革命」クイック・ガーデニングをつなぐコミュニケーション誌 クイック・ガーデニング通信 2018年春号vol.03 ,株式会社クイック・ガーデニング,2018年3月31日発行,4ページ

 
【内観体験インタビュー】
北陸内観研修所のインタビューに当社社長・渡辺則夫が出演いたしました。
当時を振り返りながら、恩師から「内観だけは続けておけよ」の言葉を胸に、20年間社員研修で内観を継続していることなどを語ります。